迷わない AI の選び方第7章

CHAPTER 07

実例集:同じ指示で、実際に作らせてみた

  • 確認日 2026年10月28日
  • 読了の目安 約14分

この章でできるようになること

  • 同じ指示を2つのAIに出して、比べるやり方が分かる
  • 僕が実際に行った実験の結果(成功も、崩れも)が分かる
  • 自分でも、同じ実験を再現できる

「迷ったら、同じ指示を2つに出して、比べる」。 これが、この本でいちばんおすすめしたい習慣です。
この章は、その比べ方の見本です。結果は、各1回ずつです。毎回こうなるとは限りません。


実験1:LP を、同じ指示で作らせた検証

何をしたか

  • 題材:架空の美容室「ヘアサロン 灯(あかり)」のLP(ランディングページ)。実在の店・お客様・実績は、使っていません。
  • 指示:同じプロンプトを、Claude と Manus に一字も変えずに出しました。1回で仕上げさせ、追加の指示は出していません。
  • 条件:画像ファイルは使わない(図形、グラデーション、SVG、CSSだけ)。1つのHTMLファイル。CTA(ボタン)は「LINEで予約する」の1種類だけ。実績・お客様の声・指示にない数字は作らない。公開しない。
  • 比べ方:できたHTMLを、スマホ幅(390×844)で、スクロールしながら撮影して、並べて見ました。

5つのパターン

記号誰が指示
AClaude と Manus基本のプロンプトのみ(デザインの指示なし)
CClaude と ManusA に「デザインの方針」(ありがちなデザインを避ける指示)を足した
BClaude のみA を、Claude Code の frontend-design スキルを呼んで実行
DClaude のみC に、「スマホ幅の画面を撮影して、自分で確認して直す」手順を足した

プロンプトA(そのまま使えます。[ ] を自分の事業に書き換えるときは、第6章の P14 を使ってください)

コピーして使う
美容室のランディングページ(LP)を1つ作ってください。これは制作実験なので、下の条件だけで作り、質問はせず、最後まで一度で仕上げてください。

【店舗情報(すべて架空)】
- 店名:ヘアサロン 灯(あかり)
- 場所:神奈川県横浜市(架空)・駅から徒歩5分・完全予約制・スタッフ2名の小さなサロン
- コンセプト:「頑張らない日のための、ていねいなヘアケア」。髪のダメージを抑えたやさしいカラーと、手入れしやすいカットが得意
- 対象読者:30〜40代の女性。忙しくて美容室に行く時間が少ない。仕上がりの自然さと、髪のダメージを気にしている
- 営業時間:10:00〜19:00 / 定休日:火曜日
- メニューと価格(税込):カット 5,500円 / カラー 8,800円 / パーマ 12,100円 / トリートメント 6,600円 / カット+カラー 13,200円
- 特長(3つ):1. 髪へのやさしさを考えたカラー 2. 毎朝の手入れが楽になるカット 3. 1人ずつ時間をかけた丁寧なカウンセリング
- 予約方法:公式LINEから(ボタンのリンク先は「#」のままでよい)

【目的】
スマホで見た人が「LINEで予約する」ボタンを押すこと。ボタン(CTA)はこの1種類だけにする。

【構成】
1. ファーストビュー(キャッチコピーとCTA)
2. お悩みへの共感
3. サロンの特長3つ
4. メニューと料金
5. ご来店の流れ(3ステップ)
6. よくある質問(3問)
7. 店舗情報とアクセス
8. 最後のCTA

【条件】
- スマホ(幅390px)で最も美しく見えることを最優先にする。PCの幅でも崩れないこと。
- 1つのHTMLファイル(index.html)にまとめる。CSSとJavaScriptは同じファイルに書く。
- 外部の画像ファイルは使わない。図形、グラデーション、SVG、CSSの表現で作る。Webフォントは使ってよい。
- 実在しない実績、お客様の声、数字は作らない。上の情報にないことは書かない。
- 公開や外部への送信はしない。

【最後に】
デザインの方針を3行で説明してください。

プロンプトCは、Aの「最後に」の直前に、次を足したものです。(Anthropic 公式のプロンプトガイドにある「ありがちなデザインを避ける」指示を、日本語にしました)

コピーして使う
【デザインの方針】
ありがちな汎用デザイン(いわゆる「AIっぽい見た目」)に収束せず、この店のために作られたと感じる、個性のあるデザインにしてください。
- 字体:魅力的で個性のあるWebフォントを選ぶ。Arial、Inter、Roboto、システムフォントのような定番は避ける。
- 色:統一感のある配色を1つ決める。主役の色と、効かせる差し色を使い、無難に散らした配色は避ける。
- 動き:派手な動きを散りばめず、ページを開いたときと、スクロールで現れる場面に絞った、上品な動きを入れる(CSSのみで)。
- 背景:単色にせず、グラデーションや幾何学模様などで奥行きと空気感をつくる。
- 避けること:白地に紫のグラデーション、定番のレイアウト、どこにでもある部品の並べ方。
- 毎回同じ選択に収束せず、この店の文脈に合う意外な選択をする。

結果:数字

所要時間消費ファイル備考
Manus A約7分90クレジット42KB外部通信なし
Manus C約7分100クレジット239KBフォントをファイルに埋め込み。外部通信なし
Claude A77秒API換算の推定約$0.2922KBGoogle Fonts を利用
Claude B(スキル)106秒約$0.3019KB
Claude C83秒約$0.2920KB
Claude D(画面確認つき)169秒約$0.3419KB
  • Claude の金額は、API換算の推定額(参考値)です。定額プランでは、そのまま請求されません。
  • Claude は Sonnet 5.5(非対話の実行)です。僕が普段使っているモデルと、同じです。
  • Manus の時間とクレジットは、僕の申告です。

結果:見た目(私の観察。主観です)

まず、僕(著者)の評価です。体験談

  • いちばん好みだったのは、Manus のプロンプトC。統一感があって、落ち着いた雰囲気で、美容室らしさが出ていると感じました。
  • 若い世代向けというより、落ち着いた層向けの雰囲気です。ターゲットを絞るなら、よいと思います。
  • Claude は、デザインのセンスは、悪くない。ただ、美容室にしては、かっこよすぎると感じました。
  • 世界観(その業種らしさ)の再現性は、Manus のほうが高い。一方で、「センスが良い」かどうか、そのものは、今回の検証では判断しづらい。必ずしも Manus が上ではありません。
  • 同じ指示でも、これだけ差が出る。それが、この実験で、いちばん伝えたいことです。

ここからは、制作側(Claude)の観察です。主観を含みます。

同じ指示A(デザインの指示なし): 左が Manus、右が Claude。

同じプロンプトA:Manus(左)とClaude(右)
同じプロンプトA:Manus(左)とClaude(右)
Manus AClaude A
印象落ち着いた紙面のような上品さ。生成り・深緑・金茶の控えめな配色、細い明朝体、広い余白暖色クリーム+橙の光+緑のボタン。ありがちな美容室LP
ファーストビュー3行の見出し、髪の流れを表す線画のイラスト、透かしの「akari」光の玉に「灯」。見出しで助詞「の、」が1文字だけ孤立
各セクション特長ごとに専用の小さなイラスト共通の部品
崩れ見つからず見出しの折り返しのみ

同じ指示C(デザインの方針つき): 左から Manus C、Claude C、Claude D。

プロンプトC:Manus C、Claude C、Claude D
プロンプトC:Manus C、Claude C、Claude D
Manus CClaude CClaude D
印象生成り+深緑の面+レンガ色のボタン。灯のアーチのロゴ、女性の横顔のイラスト。洗練、編集的墨緑×橙の灯り。縦書き3列の見出し。大胆藍墨×琥珀の灯り。縦書き2列、大きな光の円。大胆で整理された
個性の出し方イラストとブランドの世界観縦書きと暗い背景同左
崩れ見つからず縦書きで「ていねい/な」と言葉が列をまたいで分断分断は直った。ただし、横に約63pxはみ出す装飾があった

Claude B(スキル付き)は、縦書きの見出しが、光の玉と重なり、「LINEで予約する」ボタンに末尾が隠れる崩れが出ました。

この実験から、言えること検証・目安

  1. 同じ指示でも、結果には、はっきりした差が出ました。デザインの指示がなくても(A)、Manus は、崩れがなく、仕上がりが安定して見えました。僕の評価では、美容室らしい世界観の再現性は、Manus が高いです。ただし、「センスが良い」かどうかそのものは、今回は判断しづらいです。
  2. 指示を足す(C)と、Claude は大胆な個性を出せます。ただし、攻めた表現ほど、崩れやすい。
  3. Claude は、画面確認の手順を足す(D)と、崩れを自分で見つけて直せました。ただし、別の崩れ(横はみ出し)は、見つけられませんでした。画面確認は、有効ですが万能ではありません。
  4. 時間は、Manus が約7分、Claude が約1.3〜2.8分。Manus は、そのぶんそのまま使える完成度に見えました。
  5. 個性の方向が違います。Manus は「洗練」、Claude(C、D)は「大胆」。好みで分かれます。

言えないこと

  • 「Manus が常に上」とは言えません。各1回ずつで、Claude は上位のモデル(Opus や Fable)ではなく、普段使いの Sonnet 5.5 でした。上位のモデルで試せば、結果が変わる可能性があります。進め方(Manus は7分、Claude は短時間の非対話)も、同じ条件ではありません。
  • Manus が、内部で何をしたか(画面確認、反復、使ったモデル)は、確認できていません。
  • PC 幅、実機の iPhone・Android、LINE 内のブラウザでの見え方は、確認できていません。
  • 「センスが良い」かどうか、そのものの判断。好みと、「その業種らしさ」が、混ざります。あなたの目での評価が、最終判断です。

自分で、再現してみる

  1. 上のプロンプトAとCを、一字も変えずに、2つのAIに貼る。(新しい会話・新しい作業で)
  2. 1回で出させる。追加の指示は出さない。
  3. 時間、消費、追加指示の回数をメモする。
  4. できたものを、スマホ幅で見比べる。
  5. 公開はしない。

実験2:事務作業(集計・突合・メール・SNS)検証

架空のデータ(美容室の売上10行、発注と請求書の2つの表)で、4つの作業を頼みました。正解を先に計算してから、結果と照らし合わせました。

作業所要時間正確さ
お詫びメール(納品が2日遅れる)13秒内容は合っていた。ただし、頼んでいない責任の一文(「当社の管理不足でした」)が入った
担当別の売上集計16秒正解と完全一致(31,900円 / 26,400円 / 20,900円 / 合計79,200円)。「一番売れたメニュー」は金額基準と明記(件数ならカット)
発注と請求書の突合18秒仕込んだ2つの違い(単価の違い+1,000円、発注にない品目+1,800円)を両方検出。差額+2,800円も正解
Instagram 投稿5本(制限つき)36秒5本とも、文字数・ハッシュタグ3つ・絵文字1つの条件を満たした

学んだこと

  1. 小さなデータの集計・突合は、正確でした。ただし、行数が多いデータは未確認です。必ず、自分でも検算してください。
  2. 頼んでいない一文(責任、約束、曜日)が、足されることがあります。(第4章)
  3. 「一番」のような言葉は、基準を決めて頼む。
  4. 短い事務作業は、10〜40秒で終わりました。
  5. 「3時間が数分に」のような時間の短縮は、この規模では検証できていません。自分で測った数字だけを、信じてください。

実験3:第4章のプロンプト9本検証

第4章のプロンプトを、架空のデータで、各1回試しました。結果の詳細は、第4章にあります。主な発見です。

発見対策
「足りなければ質問して」だけでは、質問せず、曖昧な文を作った「作業せずに、質問だけを返して」と書く
頼んでいない曜日が入り、間違った(12/1は火曜だが月曜、10/31は土曜だが金曜)「曜日は書かない」と書く
頼んでいない責任の一文が入った「足さない。足したいときは、確認点に回す」
公開前の点検で、AIは「私は検索していないので、真偽は未確認」と、自分から断った「検索していない事実を、確かめたように書かない」と書く

実験4:セキュリティ設定が、本当に効くか検証

第5章の内容です。

実験結果
.env を読み取り禁止にしたブロックされた。「cat で見せて」と頼んでも、ブロック。設定なしでは、そのまま表示された
フックで、保護フォルダの編集の道具を見張ったEdit は、ブロック。Bash で書き換えさせると、素通りした
見張りの対象に Bash も足したブロックされた
スキルの出力の例を入れた3回ずつの比較で、頼んでいない「参加者」の行は、例なし1/3、例あり0/3。傾向を言える数ではない

この本の実例について

この章の実例は、すべて、架空のデータで行った実験です。
架空の美容室、架空の売上、架空のお客様です。実在のお客様、取引先、実績は、1つも載せていません。

  • 理由:お客様や取引先の情報を、守るためです。(第9章)
  • メリット:同じ素材で、あなたも再現できます。(付録E)

あなたの仕事の実例は、あなた自身の記録が、いちばんの教材になります。
第1章の「時間を測る」、第11章の「記録を残す」で、自分の実例を作ってください。


この章のまとめ

  • 同じ指示を、2つのAIに出して、比べる。
  • LP は、Manus が洗練・完成度・時間の長さ、Claude は大胆・早さ。ただし各1回で、好みも入る。
  • Claude は、指示を足すと個性が出て、画面確認を足すと崩れが減る。でも、万能ではない。
  • 事務作業は、小さなデータなら正確。でも、足されるものと、数字の検算に注意。
  • 設定で守る。AI の自制に頼らない。

出典と確認日(第7章)
  • 実験の共通プロンプト、結果、成果物: docs/design_experiment_prompts.md、docs/design_experiment_results_claude.md、docs/design_experiment_results_manus.md、docs/design-experiment/(HTMLと比較画像)
  • 実験2〜4の入力と出力: docs/ai_guide_verification.md、docs/guide/verification/
  • Claude のデザインの方針の元(公式): https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices
  • 検証は、レオによる実験(2026-10-28)。Claude は Sonnet 5.5 の非対話実行、Manus は Pro プラン。各1回。評価は主観。